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2007年7月 5日 (木)

100%のヴィーナスには誰も勝てない。

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ウィンブルドン・2週目の水曜日、女子シングルスの4回戦。今大会・No-2シードのM.シャラポワと、ウィンブルドン3回の優勝歴がある、V.ウィリアムスが対戦。スコア{1-6.3-6}で、ウィリアムスが勝利した。試合全般を通じて、ウィリアムスのサーヴが冴え渡り、シャラポワはリターン・ゲームで1つのブレークもできず、デュースもわずか1回に止まった。その結果、試合時間、1時間20分のワンサイド・ゲームに終わった。
 1方、同日に行われた女子シングルス・準々決勝では、今大会・No-1.シードの、J.エナンと、過去2回優勝の、S.ウィリアムスが対戦。スコア{6-4.3-6.6-3}で、エナンが勝利した。エナンは、知的な戦略と多彩な技で、S.ウィリアムスのミスを誘うプレーに専念した。芝の対戦では分が悪いエナンだが、S.ウィリアムスはテーピングを脚の下半分に巻くほどに足を負傷しており、それが勝負の行方を左右することにもなった。

 4回戦について言えば1言。「Venus.アンタ、強すぎだよ。全然、年取ってないじゃん、アンタ、バケモンだよ。」 という所。とにかく、Shareapova.のテニスがどうこうという問題じゃない。Venus.の妹、Serena.がよく「私が100%の力を出せれば、誰も勝つことは出来ない」と言ってるが、それはもちろん姉にも当てはまる。このゲームで、Venus.はそういう圧倒的なプレーを見せつけた。この、Venus.にはおそらく、全盛期のグラフやナブラチロワでも勝てないだろう。
 また、Sharapova.は肩を負傷していた。この数ヶ月、試合がない期間でも、毎日2時間半の治療を受けていたという。強風もあったが、この試合で彼女のサーヴが乱れたのも、そういうワケがある。試合後の彼女のコメントでは、「2セット目から、サーヴのスピードが普段の115マイルに達して、かなり安心した。だけど、これからすぐ家に帰って、ドクターに肩を緊急診療してもらう」ともらした。
 そして、Venus.の脅威はサーヴやストロークのパワーだけじゃなく、フットワークにもある。コートの端から端まで豪速球で振られても、返せますよ!というスピードなのだ。それはまさに、バケモノだ。
 それでも、この試合、Sharapova.は、裏をつくボール運びで幾つもウィナーを決めた。また、過去の敗戦の経験を生かし、まともに打ち合わずにロブなどの小技を多用した。が、それでも、Venus.のパワーとスピードには、まるでかなわなかった。
 このゲームを見た世界中のテニス・ファンは、きっと今大会の女子の優勝者が、Venus.だと確信したことだろう。No-1.シードの、Henin.にしたって、彼女にはコテンパンにやられるに違いない。B_10_henin_269_gettyimages_a_livesey_1

 Henin.は同日のQ.F.で、Venus.の妹の、Serena.に競り勝った。しかし、Serina.は足の下半分をテーピングでグルグル巻きにするほどに負傷していたのだ。
 確かに、このゲームの、Henin.は素晴らしかった。スマートな展開と豊富なショットが冴え渡っていた。トップ・スピン・ロブに、ドロップ・ショット。特に相手のパワーを利用して放つ、ライジング・ショットが良く、その創始者たる伊達公子のキレを上回るものだった。それらによって、Henin.はゲーム展開に緩急をつけ、Serena.のミスを呼び込んだ。まったく、Sharapova.にも、こういう頭と技があったらなぁと思わせるものだ。
 だがもし、Serena.の足の負傷がなければ、Henin、に勝つ見込みはなかっただろう。Henin.の戦術の核は、Serena.の負傷した足に体重を乗せさせるような動きを引き出すことにあり、彼女はそれに見事に成功した。

 決勝はおそらく、Henin.と、Venus.のカードになるだろう。そして、僕が思うにそうなれば、Venus.の楽勝に終わり、Henin.の生涯・グランド・スラムの記録の夢は果かなく消えることだろう。というのも今の、Henin.以上に頭と技のあった全盛期の、Martina Hingis.でさえ、Venus.のパワーとスピードには勝てなかったのだ。Venus.が自滅しない限り、彼女の、Wimbledon.4回目の優勝は固い。

 ところで、Venus.と、Sharapova.の試合には、1つ大きな疑問点がある。これが、4回戦のカードだという事だ。Wimbledon.公式ウェブの記事にもあったが、これは明らかに早すぎる対戦だ。もちろん、そうなるのは、Venus.のシードが23位と低いからだ。が、彼女の、Wimbledon.での実績と今のコンディションの良さを考えれば、トップ・シードでもおかしくない選手だ。
 Wimbledon.は、WTAランク以外の要素も混ぜて、トーナメント・ドローを作るべきだ。何にしても、Sharapova.の早期敗退は、Wimbledon.への世界のメディアと人々の関心を最も失わせるもので、1番に大損するのは、All England Club.に他ならない。B_10_vwilliams_217_gettyimages_c_brunski

 1方、Venus.のシードが低いのにはワケがある。彼女は間違いなく、WTAのランク・アップよりも、グランド・スラムに照準を当てるキャリア路線を取っている。それに対し、大半の選手は、グランド・スラム前に試合に多く出て、ランク・アップを図る。そうすればグランド・スラムの早い回で、強豪選手とやらずに済むからだ。しかし、その代償として、過密スケジュールによって、ケガをすることになる。
 今大会の、Sharapova.もその犠牲者だし、最近、24歳の若さで引退した、クライシュテルスもそうだ。そこには、この数年の女子テニス界の大ブームもある。それによって、試合数が増えたため、選手生命が恐ろしく短くなってきているのだ。
 その背後には、非人道的で強欲な、WTAがある。Venus.のキャリア路線は、それに反抗するという意味でも有意義なものだ。彼女のように実力があれば、幾らシードが低く、グランド・スラムの序盤で強豪と当たっても、勝ち抜いてゆける。何にしても、ケガで選手人生を縮めるよりは、遥かにマシだ。今大会、Venus.が優勝すれば、その路線に転向する選手はもっと増えることだろう。■

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